サイバー攻撃からの復旧では、技術担当者だけでなく、業務担当者と経営者も判断を求められます。アスクルの公表された対応経過を学習材料に、サービス再開の判断を試すチーム演習を提案します。これは既存の開催プログラムの案内ではなく、学んだ知識を試すための演習設計の例です。
アスクルの公式セキュリティページは、2025年10月19日の攻撃検知後にネットワーク遮断とサービス停止を行い、10月22日には外部クラウドへの不正アクセスが発生したと記載しています。その後の認証情報リセットや管理アカウントへの多要素認証適用を経て、残存脅威調査を踏まえた安全性の判断後、11月12日からWeb注文を段階的に再開したと説明しています[1]。2026年10月の新規被害ではなく、公表済みの対応経過を、復旧の備えを考える材料として取り上げます。
ここから得たい教訓は、社内のサーバーを戻す作業と、組織の業務を安全に再開する作業の範囲が同じではないということです。外部サービス、管理アカウント、委託先の接続、端末に残るアクセス権限も、復旧計画の対象として確認する必要があります。自組織の構成に即して、誰がどの認証情報を変更し、影響するサービスの動作を誰が確認するかを整理します。攻撃の影響を受けた範囲が分からない段階で、復元できたことだけを再開の根拠にするのは避けたいところです。
架空の受注業務を想定し、「バックアップは復元できたが、外部サービスの認証情報への影響が確認できていない」という状況を提示します。技術担当は侵害範囲、認証情報、監視の状況を整理し、業務担当は手作業の注文との突合と顧客対応を確認します。経営役は、未解決のリスクと暫定措置を踏まえ、どの範囲をいつ再開するか判断します。判断に必要な追加情報を求めることも、演習の成果です。復元できたことだけを再開の根拠にしないようにします。
この演習はFlagを探すCTF形式ではなく、複数の役割で判断する机上演習です。Cyber Challengeの「知識を使い、不足を見つけ、次に学ぶ」という考え方に対応させています。評価するのは、判断に必要な情報を挙げられたか、確認済みと未確認を分けたか、再開の条件と責任者を明確にできたかです。終了後は、迷った判断を一つ選び、必要だった知識と手順を確認します。同じ参加者で条件を変えて再挑戦すると、判断の改善を振り返りやすくなります。
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