広島と英国ウェールズ。一見すると遠く離れた二つの地域が、なぜサイバーセキュリティを通じてつながっているのでしょうか。Cyber Hiroshimaは、Cyber Walesとの長年の交流を背景に設立され、ウェールズ政府から「Cyber Walesの日本支部」として位置づけられています。この記事では、その関係がどのように生まれ、何を目指しているのかを紹介します。
Cyber Walesは、英国ウェールズを中心に形成されているサイバーセキュリティ・エコシステムです。
企業だけではなく、
などをつなぎ、知識、人材、技術、ビジネス機会を共有するCommunityとして発展してきました。
Cyber Walesの公式サイトによれば、現在のエコシステムには2,700人を超えるメンバーと900を超える組織が参加し、年間50回を超えるミーティングが行われています。
Cyber Walesの特徴の一つは、一つの巨大な組織ですべてを運営するのではなく、地域や専門分野ごとに複数のClusterを形成していることです。
South Wales、North Walesといった地域Clusterに加え、Education & Training、Operational Technology、Data Privacy & Ethics、AIなど、特定テーマを中心とするCommunityも活動しています。
そのネットワークの中に、日本のCyber Hiroshimaも位置づけられています。
Cyber HiroshimaとCyber Walesの関係を理解するうえで、最も重要なのがこの点です。
Cyber Hiroshimaは、Cyber Walesと単に交流している外部組織というだけではありません。
ウェールズ政府のInternational Relations Annual Report 2023–2024では、Cyber Hiroshimaの設立について、
“Cyber Hiroshima (the Japanese branch of Cyber Wales)”
と明記されています。
つまり、ウェールズ政府からもCyber Walesの日本支部として位置づけられています。
Cyber Wales自身のTeamページでも、Cyber HiroshimaはGeographic Clustersの一つとして掲載され、「Cyber Hiroshima Cluster Manager」が置かれています。
これはCyber Hiroshimaが、単なる海外交流先ではなく、Cyber Walesの国際的なCyber Security Ecosystemを日本へつなぐClusterとして活動していることを示しています。
Cyber HiroshimaとCyber Walesの関係は、2023年に突然始まったものではありません。
Cyber Walesは2019年のHistoryにも、日本におけるJapan Cyber Summitへの参加と、日本のCyber Clusterとの将来的な協力について記録しています。
こうした交流を積み重ねる中で、
など、双方が協力できる分野が見えてきました。
2023年には、日英両国の関係を強化する「Hiroshima Accord」も発表され、サイバーセキュリティは日英協力の重要な分野の一つとして位置づけられました。
ウェールズ政府は、この流れの中でCyber Hiroshimaの発足を、WalesとJapanのTech分野における関係発展の一つのmilestoneとして紹介しています。
つまり、Cyber Hiroshimaは単に「ウェールズの活動を日本へ紹介する団体」ではありません。
より大きな目的は、
HiroshimaとWalesの間に継続的なCyber Securityの橋をつくること
にあります。
Cyber Hiroshimaが目指しているのは、
Wales → Japan
という一方向の情報提供ではありません。
目指しているのは、
Hiroshima / Japan ↔ Wales
という双方向のネットワークです。
例えば、ウェールズで生まれた教育プログラムやサイバーセキュリティ技術を日本へ紹介する。
一方で、日本の企業、教育機関、研究者、学生をCyber WalesのCommunityにつなぐ。
日本企業がウェールズの技術企業と出会う。
ウェールズの企業が日本市場への理解を深める。
学生同士が同じCyber Challengeへ参加する。
研究者や専門家が知識を交換する。
こうした小さな接点を継続的に増やすことが、Clusterの役割です。
Cyber Walesが持つエコシステムと、日本側のCommunityをつなぐことで、一つの組織だけでは作れない機会を生み出すことができます。
Walesとの連携が具体的な学習環境につながっている例の一つが、SudoCyberとの協力です。
SudoCyberはウェールズを拠点とするCyber Security企業で、クラウド型Cyber Range「SudoRange」を提供しています。
Cyber Hiroshimaでは、CyBOKによるKnowledgeとSudoRangeによるPracticeを組み合わせ、
知る → 試す → 振り返る → もう一度学ぶ
というLearning Loopの構築を進めています。
これは、Walesとの関係が単なる「国際交流」で終わっていないことを示す重要な例です。
海外のCommunityとのつながりから、実際に日本の学習者が利用できるLearning Environmentへつなげる。
Cyber Hiroshimaでは、このようにConnectionを具体的なValueへ変えることを重視しています。
もう一つの具体例がCyber Challengeです。
2024年2月、CyberFirst関連イベントにおいて、Cyber Hiroshimaは東京の英国大使公邸でCTFを運営しました。
その際、Cyber Walesのメンバー企業であるSudoCyberは、ウェールズのBreconからCTF Labを運用し、SudoRange上で英語と日本語の演習環境を提供しました。
参加者は東京にいました。
演習環境を支えるチームはWalesにいました。
それでも、一つのCyber Challengeを共同で実施することができました。
これはオンライン技術の活用例であると同時に、
Hiroshima / JapanとWalesのCommunityが実際の活動を共同で作れる
ことを示しています。
距離をなくすことが目的なのではありません。
距離があっても協力できる環境を作ることが目的です。
Cyber WalesはCyber Security Clusterについて、単なる交流会ではなく、
などを目的とするNetworkとして説明しています。
Cyber Hiroshimaも、この考え方を日本で発展させていきます。
その対象はサイバーセキュリティ企業だけではありません。
企業には現実の課題があります。
教育機関には人材育成の役割があります。
研究者には専門知識があります。
学生には将来の可能性があります。
個人の学習者には、新しい分野へ参加する入口が必要です。
それぞれが単独で活動するのではなく、つながることで新しい機会が生まれます。
Clusterの価値は、組織そのものではなく、つながりから何を生み出せるかにあります。
Cyber Hiroshimaが目指しているのは、Cyber Walesという完成したモデルをそのまま日本へコピーすることではありません。
ウェールズで積み重ねられてきた、
Community
Collaboration
Education
Innovation
という考え方を学びながら、日本の環境に適したCyber Security Ecosystemを作っていくことです。
そして日本で完結するのではなく、Cyber Walesとのつながりを活かし、国際的なCommunityの一部として活動する。
Cyber Walesは2024年の公式記事で、Cyber Hiroshimaについて、日本で同様のCyber Clusterがさらに生まれ、より多くのPartnershipにつながっていくことへの期待を示しています。
Cyber Hiroshimaにとっても、自分たちだけが一つのClusterとして存在することが最終目的ではありません。
広島から始め、
日本国内の企業、地域、教育機関、専門家、学生をつなぎ、
さらにWalesをはじめとする海外のCyber Communityへ接続する。
そのためのGatewayとなることを目指します。
サイバーセキュリティには国境がありません。
脅威も、技術も、知識も、一つの地域だけに留まるものではありません。
だからこそ、人とCommunityも国境を越えてつながる必要があります。
Cyber HiroshimaはCyber Walesの日本支部として、
WalesのKnowledge、People、TechnologyをJapanへ。
JapanのKnowledge、People、OpportunityをWalesへ。
その双方向の流れを作っていきます。
重要なのは、「海外とつながっている」こと自体ではありません。
つながることで、
何を学べるのか。
誰と出会えるのか。
何を一緒に作れるのか。
そこから生まれる新しいLearning、Collaboration、Innovationこそが、Cyber HiroshimaとCyber Walesがつながる意味です。
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Cyber Wales, History of Cyber Wales
Welsh Government, International Relations Annual Report 2023–2024
Cyber Wales, Cyber Wales Clusters
Cyber Wales, Cyber Hiroshima cluster hosts NCSC Cyber First event